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特別聴講学生)、東京大学 生産技術研究所の高江 恭平 特任講師、インド工科大学・マドラス校 マニ イタヤラヤ 教授、東京大学 田中 肇 名誉教授(現在:先端科学技術研究センター シニアプログラムアドバイザー)の研究グループは、2次元の流体中に浮かんだ、時計回り、反時計回りに回転する円盤を混合した系での相分離を、流れの効果を正しく取り入れた流体力学シミュレーションによって研究しました。2種類の円盤の数が同程度のときは、互いに反対方向に流れる帯状構造が、また両者の数が大きく異なるときには、無秩序な相の中に回転するドロップレットが形成されることが明らかになりました(図1参照)。 一般に、相分離は、サラダドレッシングで見られるように、小さな相分離構造が徐々に大きくなるという粗大化と呼ばれる過程を経ます。しかし、このような常識に反し、粗大化過程を経ることなく、無秩序な乱流状態から直接最大の構造を形成することを発見しました。同じような回転粒子混合系でも液体がない乾いた系においては、やはり粗大化を伴う相分離が観察されます。したがって、この異常な振る舞いは、液体の存在に起因しているはずです。詳細な研究の結果、この特異な相分離挙動は、2次元液体の乱流に特徴的な小さなスケールから大きなスケールにエネルギーが輸送される逆カスケード(注3)現象に起因することが明らかになりました。この発見は、乱流領域における流れの自己組織化に伴う、自己駆動粒子群の自発的な構造形成の新しいメカニズムを明らかにしたものと言えます。 本研究成果は、2022年12月27日(英国時間)に「Communications Physics」に掲載されました。○発表内容: 「自己組織化」とは複雑な構造やシステムが自発的に組み上がる現象を指します。この現象の一種に、例えば、水流の中を泳ぐ魚の群れが全体として特定の形を形成するように、流体中で動いている粒子が複雑な構造やシステムを自発的に作る場合があり、これらは自然界や生体内でも見られるため、近年注目を浴びています。しかし、流体中を動いている粒子の自己組織化については、流れを介した相互作用の複雑性のため、どのような機序によってこの現象が起きるのかはわかっていませんでした。 そこで、本研究グループは、粒子の回転運動により生じた流体の渦を介した動的な相互作用に着目して、時計回りと反時計回りの2種類の回転円盤を2次元の液体の中で混ぜた系の自己組織化現象について、同グループが独自に開発してきた、流体中の粒子運動を正しくシミュレーションすることを可能にする「流体粒子ダイナミクス(FPD)法(注4)」を用いて研究を行いました。 その結果、2次元の流体中の時計回り、反時計回りに回転する円盤の混合系は、粒子間に働く渦を介した流れの相互作用のみによって、同じタイプの円盤が集まることで相分離現象を示すことが明らかになりました。片方の成分が他方の成分より少ない場合には、少ない方の円盤を含む回転する液滴がまず一時的に形成され、その後、円盤間の流体を吐き出すことで、回転する結晶粒からなるドロップレットに変化することがわかりました(図1左図参照)。一方、両成分の量が同程度の場合は、反対方向に流れる2本の帯状の相分離構造が形成されます。また、この反対向きに流れる帯の間には、渦が形成されることが明らかになりました(図1右図参照)。どちらの場合も、サラダドレッシングなどの相分離で見られるような、徐々に相分離構造が粗大化する過程が見られず、混合された初期の均一状態から乱流状態を経て、大きな相分離構造が直接形成されることが明らかになりました。 このユニークな相分離挙動、すなわち相分離構造の粗大化の欠如は、2次元乱流特有の小さなスケールから大きなスケールに運動エネルギーが輸送されるという逆カスケード現象に起因することが明らかにされました。このメカニズムこそが、ここで見られた特異な相分離挙動を、通常の相分離とは本質的に異なるものにしている原因です。また、流体の流れは、遠方にも影響を与えるため、多くの粒子の間に動的な相互作用が生まれること、さらには、野球のカーブのメカニズムとして知られている、回転する円盤にその進行方向に垂直にマグナス力(注5)と呼ばれる非線形な力が働くため、同じ方向に回転する多数の粒子の間には反発的な力が働くなど、回転する円盤の流体中の集団運動は極めて複雑になることも明らかになりました。本研究は、生物などの自己駆動粒子が、非線形性を伴う流れのもとで、どのようにして自己組織化するのかという問題に、新たな光を当てると期待されます。 本研究は、日本学術振興会 特別推進研究(JP20H05619)、基盤研究(A)(JP18H03675)、東京大学とインド工科大学との協定に基づく交換留学プログラムの支援を受けて実施されました。○発表雑誌:雑誌名     :「Communications Physics」(2022年12月27日)論文タイトル  :Phase separation of rotor mixtures without domain coarsening driven by two-dimensional turbulenc著者      :Bhadra Hrishikesh, Kyohei Takae, Ethayaraja Mani, and Hajime Tanaka*DOI 番号    :10.1038/s42005-022-01116-6○問い合わせ先:東京大学名誉教授東京大学 先端科学技術研究センター シニアプログラムアドバイザー(特任研究員) 田中 肇(たなか はじめ)Tel: 03-5452-6125E-mail: tanaka(末尾に"@iis.u-tokyo.ac.jp"をつけてください)○用語解説:(注1)乱流流体の速度や圧力などが不規則に変動する流れのことを乱流と呼ぶ。(注2)自己組織化ランダムな状態にある構成要素が、構成要素間に働く相互作用により自発的になんらかの秩序構造を形成する現象のことを呼ぶ。(注3)逆カスケード小さい渦が持っていたエネルギーが渦の合体によって、大きな渦のエネルギーになるという、3次元系で見られるのとは逆向きのエネルギーの移動のことを指す。(注4)流体粒子ダイナミクス(FPD)法Fluid Particle Dynamics(流体粒子動力学)法と呼ばれる手法のことで、コロイド粒子の運動と溶媒の流動を数値シミュレーションに取り込むことで、コロイド粒子の運動によりどのような流れが生ずるかを効率的に計算する方法。(注5)マグナス力回転する円柱または球(2次元の場合は円盤)が一様な流れの中に置かれたときに、その流れの方向に対して垂直の方向に働く力をマグナス力と呼ぶ。○添付資料: 図1 時計回り、反時計回りに回転する円盤の混合系で見られた最終的な相分離構造。色が赤くなるほど流体の流れが強い。また、矢印は流れの速度ベクトルを表している。左図は、回転の向きの異なる粒子の数に差がある場合で、少数の相が回転するドロップレットを形成する。右図は、2種類の円盤の数が同じときに見られる帯状の相分離構造。 前へ 次へ ニュース一覧へ戻る ニュース一覧へ戻る 前へ 次へ カテゴリー すべて イベント プレスリリース 採用情報 トピックス 月別アーカイブ 選択してください 2024年5月 2024年4月 2024年3月 2024年2月 2024年1月 2023年12月 2023年11月 2023年10月 2023年9月 2023年8月 2023年7月 2023年6月 2023年5月 2023年4月 2023年3月 2023年2月 2023年1月 2022年12月 2022年11月 2022年10月 2022年9月 2022年8月 2022年7月 2022年6月 2022年5月 2022年4月 2022年3月 2022年2月 2022年1月 2021年12月 2021年11月 2021年10月 2021年9月 2021年8月 2021年7月 2021年6月 2021年5月 2021年4月 2021年3月 2021年2月 2021年1月 2020年12月 2020年11月 2020年10月 2020年9月 2020年8月 2020年7月 2020年6月 2020年5月 2020年4月 2020年3月 2020年2月 2020年1月 2019年12月 2019年11月 2019年10月 2019年9月 2019年8月 2019年7月 2019年6月 2019年5月 2019年4月 2019年3月 2019年2月 2019年1月 2018年12月 2018年11月 2018年10月 2018年9月 2018年8月 2018年7月 2018年6月 2018年5月 2018年4月 2018年3月 2018年2月 2018年1月 2017年12月 2017年11月 2017年10月 2017年9月 2017年8月 2017年7月 2017年6月 2017年5月 2017年4月 2017年3月 2017年2月 2017年1月 2016年12月 2016年11月 2016年10月 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